紀元前600年、地中海を渡ってきたギリシャ人によって、フランスで最初のぶどう栽培が伝えられました。それが、ここプロヴァンスです。その後、ローマがこの地を植民地化した事で、ぶどう栽培とワインの生産が更に発展し、フランス各地へと広がっていきました。
シャトー・ド・カラヴォンは、プロヴァンス地方の西部に広がるコトー・デクス・アン・プロヴァンス地方の中心に位置する、ランベスク村にあります。画家のポール・セザンヌの作品で有名な『サント・ヴィクトワール山』を望むぶどう園は、森と丘陵に囲まれたひとつながりの畑です。南東に面した丘の小さな段々畑からできており、立ち入りや作業を行うことが難しいこともあります。松の木や南フランスのハーブが香り、夏には蝉の声が響き渡ります。そこには本物の生態系の縮図があり、農薬や除草剤に頼らず、昔ながらの手法でぶどう栽培が行われています。
主なブドウ品種は、グルナッシュ、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カリニャン、サンソー、ヴェルメンティーノ、ブールブーラン、クレレットです。最近、白ワイン向けのセミヨンも新たに加わりました。粘土質、石灰岩の、小石が多い土壌は比較的痩せており収穫が少ないですが、そんな条件下に育ってこそ、ぶどう本来の姿を表した、しっかりとした骨格の凝縮感あふれるワインを造り上げることができます。シャトー・ド・カラヴォンはEUオーガニック認証を受けており、ぶどうの栽培は、自然環境に配慮した伝統的な手法で行っています。オーガニック肥料のみを使用し、除草剤を使わずに耕地を管理しています。ブドウの木の病害を防ぐための管理は必要な分だけ行い、あとは自然の力に任せ、土地の持ち味を生かしたぶどう栽培を行っています。
シャトー・ド・カラヴォンのぶどう園は周辺地域で最古のもの伝えられています。オラニエ公ウィレムが栽培を行ったのが始まりで、フランス革命後に分割され、何世紀もかけて再建が行われてきました。そのぶどう園の中心にたたずむシャトーは、ローマ時代の遺跡の基礎をもとに17世紀頃から建てられはじめ、長い年月をかけて増改築が繰り返されてきました。シャトー・ド・カラヴォンのある、ランベスク村は、歴史的・経済的な観点の両方から、その名がよく知られています。コトー・デクス・アン・プロヴァンス地方の中心に位置することから、18世紀にはプロヴァンスの村の総会を主催し、「エクス・アン・プロヴァンス地方のリトル・ヴェネツィア」として知られていました。その時代の旧跡が今でも多く残されており、当シャトーも、そのうちの一つなのです。
ステンレス鋼とコンクリート製のタンクは、温度を完全に管理することができます。ワイン醸造は、伝統的な方法で行われ、マセラシオン・ペリキュレール(果皮浸漬)、セニエ法、澄んだ果汁を用いて行います。産地では珍しく、私たちのシャトーでは、生産の40%を赤ワインが占めます。マセラシオンに十分に時間をかけて、ゆっくりと熟成を行います。発酵中に、ミクロ・オキシジェナシオンを行います。これは、発酵中、熟成中の赤ワインに、セラミック製筒を通して酸素の微泡を吹き込む技術です。こうすることでポリフェノールの酸化を催促し過度な重合をもたらすことで、きめ細かい質感を生み出します。これにより、当シャトーのワインに含まれる強いタンニンを和らげます。
19世紀の終わりにオディベール家の初代エドゥアール氏が村の中心の『ルレドラポスト(各地に輸送業務を行う郵送経由所)』をワインセラーに改築し、ワイン造りを始めて以来、5世代に渡り伝統が受け継がれています。
村の中心の『ルレドラポスト(各地に輸送業務を行う郵送経由所)』をワインセラーに改築し、ワイン造りを始めた。
シャトー・ド・カラヴォンと周辺の土地を購入。
コトー・デクス・アン・プロヴァンスのAOC(原産地呼称制度)の開発に携わり、尽力した。
ぶどう品種とワインの品質の向上に努めたことにより、シャトーが広く知られるようになった。ぶどうとワインの世界に魅了されたモーリス氏は、ONIVIN(全国ワイン同業者連合会)の運営に携わりつつ、50年近くにわたりワイン造りを続けてきた。
父親の意志を継ぎ、先代の築き上げてきた伝統的な製法を守りつつ、新しい技術も取り入れながら、次の世代に引き継ぐための努力を日々続けています。ワイナリーとワインセラーの両方で抜本的なリニューアルを行い、最新設備を導入。ぶどう園の改築を行い、新品種の栽培を始めました。地域を代表するワイナリーとして、シャトー・ド・カラヴォンのワイン造りの物語はこれからも続いていきます。また、「ワイン造りをとりまく人と人との繋がりを大切に育てつつ、自然に対して忠実に、正直に、敬意を持って取り組んでこそ、その土地の自然の力を最大限に引き出した、豊かな味わいのワインを造り出せる」と考えます。